ネタばれありです!ずいぶん前にこの記事を書きかけのまま放置していたら、この作品がいつのまにか「このマンガがすごい!2009」にランクインしていた!すごいですね、おめでとうございます。
ネットサーフィン中にたまたま引っかかってきた反フェミニストらしき方のブログでこの漫画がぎったぎたに貶されてて、ここまでひどく言われるってどんな漫画なんだろうと逆に興味が湧きました。松田さんの本は既に1冊持ってるので特に迷いもなく。
第一夜 ベルサイユのばら漫画を読むのが趣味でありベルばらのオスカルに憧れる派遣社員の三沢勝子。正社員との待遇の違いを嘆き、どれほど働いても報われない状況を脱しようと三沢が起こした行動は…。
出来過ぎなラストではあるけれどなんだか元気が出てきます。こういう元気をもらうため、というのが私が少女・女性漫画を読む理由の一つであると言えますね。
第二夜 ガラスの仮面"女子アナ界の姫川亜弓"とマスコミに揶揄される万城目雅。一見お高くとまって見える雅だが、影では努力もしているし裏方への感謝も忘れない。しかしそのとっつきにくさからキャスターを降ろされ…。
そしてお色気アナウンサーの丸美が枕営業により雅の後任に就きます。どれほど丸美が北島マヤと称するにはふさわしくないか、が重点的に描かれていたように感じました。これはこれでおもしろかったですけどね。
第三夜 パタリロ!パタリロによく似た息子・一(はじめ)を持つ母親の東花子。憩いの場であるママサロンで、サロン仲間の浅田さんに英才教育を進められ…。
『パタリロ!』って読んだことないんですけど、
パタちゃんはじめちゃんはとてもかわいいです。
第四夜 あさきゆめみし結婚に希望を見出せない図書館司書の田村由布子。図書館に出入りする出版社の営業マン・上薗と割り切った体の関係をこっそりと続けている。由布子にとっての光源氏は上薗であったのだが…。
この5作品のオマージュ元の中で私が実際に通しで読んだことがあるのがこの『あさきゆめみし』だけであるせいか、登場人物の関係や状況が、他の章よりも顕著にオマージュ元に例えられているように見えました。特に
女は全ての姫になれなくても六条御息所だけにはなれるのだ-----
というモノローグが印象的でした。文学的な美しさで女の情念のようなものがうまく描かれています。
第五夜 おしゃべり階段パリコレ出演という経歴を持つモデルのキワコ。セレブになりたいキワコは実家がラーメン屋であることをひどく恥じていたが…。
キワコの身の振り方がちょっと微妙かなあ。こっちがだめだからあっち、みたいなのは…。手足がひょろ長いという理由で宇宙人と呼びキワコをいじめていたという同級生のサトコ、キャラ的にかなり強烈なのに見た目は適当描きされてるところがおもしろい。
最終夜 少女漫画家たち物議をかもして(?)いるのはこの章でしょうか。これまでの章にちょいちょいと出てきては"売れない"アピールをしてきた少女漫画家"俵あん"が、自分にとっての漫画を描く意味を見つめなおし、少女漫画家としての方向性を見出すまでの過程が描かれます。
青年漫画家のメンバーとの飲み会にて、「少女漫画はレベルが低くて読めない」「青年誌はあらすじ読まされてるみたいでつまらない」といった一触即発なセリフの応酬の後、女性誌から青年誌に移ったら爆発的に売れたという"ぽん太"さん(女性)の一言。
女は少年漫画も青年誌も読むけど、男は少女漫画を読まない。それは面白くないからじゃなくて、男は自分達の価値観に女が近付くのはかまわないけど、自分達が女の価値観に近付くのは絶対にイヤなのよ。(P187)
うーん…考えすぎなんじゃないかなあ…。男性が少女漫画を読まない理由は、単に恋とか愛とかにまつわる心の機微を味わったり共感したりという行為を漫画に求めてないからなんじゃないですか?表紙に大きく描かれた瞳のようにきらびやかな絵柄に目が滑ってしまって読めないという人もいるでしょうし。興味を持てないのだから無理に読む必要もない。
画を目で読んで視覚的に楽しむアクションやスポーツ漫画、感情移入することで楽しむ恋愛漫画、などなど、自分が漫画を読むことで何を得たいのかでジャンルの選択が決まっていくわけで、表向き少年/少女という分け方をされてはいても、読者側の取捨選択にそれらの性別は大して関係ないはず。
とはいえ世の中を見渡せば、"女子供"という言葉が"劣るもの"の代名詞のように捉えられるのと同様の感覚が"少女漫画"にもあることも確かに否定はできないんですよね。うーん。
そんな問題を投げかけつつ、俵あんは天啓を得て自らの道を切り開くことになっていきます。
最後まで読み終わって、作中で大人気を博す王道的少女漫画の描き手・麗束薔子(うららつかそうこ)の生きざまがすべてを表していると気付きました。病気で普通の生活すらも送ることができなかった彼女は紙の上の主人公に"世界を獲得"させ、そうすることで読者を楽しませると同時に自らも励まされたんだろう。帯裏のコメントにもあるように、少女漫画家の少女漫画への想い、というのがまさにキーワードになっています。
『あさきゆめみし』と『ガラスの仮面』(これは途中まで読んだことがある)以外の3作品は手にすらとったことがないので、機会があれば読んでみたいです。それから再読してみるとまた違った発見があるかも?